第7章 ❇︎2月 玉砕覚悟で【うたプリ 神宮寺レン】
今年の春から、レンは早乙女学園というアイドル育成の学校に入学する。
それはすなわち将来は芸能人になるということ。
つまるところ恋愛はご法度だということ。
その話を聞いてから、ずっと心に決めていた。
今年こそ想いを告げると。
なのに、まさかそれすらも危うくなるとは。
「そ、うなんだ…やっぱりお返し大変だもんね」
「貰っておいて食べないのもレディ達に失礼だしね。それに…そろそろはっきりさせておきたいんだ」
何をはっきりさせたいのかは聞かない。
彼の想い人が、彼をどう思っているのかだと分かっているから。
「素敵な誕生日になると良いね」
遠回しに成功を祈ることしか、私には出来なかった。
たとえそれが私の失恋を意味するとしても。
「…はぁ…」
レンと別れて家に帰ってきてからも、ソファに座り込んでずっと考えていた。
渡すべきか、渡さないべきか。
彼が好き。
この気持ちは変わらないし、他の人に負けていないと思っている。
それでも、振られると分かっていてチョコレートを渡しに行くなんて考えただけで涙が出そうになった。
「どうしよ…」
やっぱりやめようかな。
振られて気まずくなるよりこのまま友達でいた方が良いもの。
そう思った時。
「っ…?!も、もしもし?」
『やぁ、。今ちょっといいかい?』
「レン?…良いけど、どうしたの?」
先ほどまで話していたのに、わざわざ電話してくるなんてどうしたのだろう。
そう思って電話の向こうの彼に意識を持っていくと、耳に飛び込んできたのは予想外の言葉。
『俺、告白しようと思うんだ』
「え?!」
『考えてたんだけど…最高の誕生日にするにはやっぱり自分で動かないといけない気がしたんだ。彼女の気持ちがどうであれ、後悔はしたくない』
彼の言葉は私の心にまっすぐ突き刺さった。
逃げかけていた私を捕まえて、背中を思い切り叩かれたような感じがした。