第7章 ❇︎2月 玉砕覚悟で【うたプリ 神宮寺レン】
神宮寺レンは甘いものが苦手である。
そんなことは、昔からの付き合いで知っていた。
それでも彼へのプレゼントにチョコレートを選んだのは、
振られてすっぱり諦めるため。
「レン!」
「やぁ、。今日もかわいいね」
自他共に認めるフェミニストの彼から甘い言葉が出るのは当たり前。
呼吸と同じくらい自然に溢れる褒め言葉にも慣れてしまった。
「またそういうことばっかり。この間も女の子と遊んでたでしょ」
「レディ達が俺を放っておかないのさ」
「…もう」
2月14日という彼の誕生日を明日に控え、彼は女性と街を歩く頻度が高くなった。
きっと向こうから誘ってくるのだろう。
誕生日プレゼントの希望とか、バレンタインのリサーチとか。
この時期に聞きたいことはいくらでもある。
「今年もたくさん貰いそうだね」
レンがたくさんのチョコレートを受け取るなんて毎年のこと。
確認のようなつもりで、何気なく発した言葉だった。
しかし。
「いや、今年は貰わないつもりなんだ……大切な人以外からは」
意外な、そして重大な言葉が返ってきた。
大切な人が誰かは、怖くて聞けなかった。