第4章 ❇︎2月 チョコは甘いとは限らない【うたプリ トキヤ】
「すっかり遅くなっちゃった…!!」
結局渡すタイミングを掴めなくて気付けば放課後。
朝からここまでの間、隙あらばチョコレートを渡そうと見張っていたのだが、他の女子が絶えず彼の周りにいて渡す暇がなかった。
流石にこれだけ遅くなると、学生の姿は見えない。
トキヤも帰っているかと思ったけれど、彼はよく自主練をしている。
今日もそうなのではないかと、レッスン室に向かうことにした。
明日でも良いじゃんと友人には言われた。
でも、今日じゃなきゃダメなのだ。
バレンタインというこの日でないと、チョコと一緒に溶かして固めた想いは届けられない。
足早に、いつしか早歩きは走りへと変わる。
息を切らせてレッスン室に辿り着くと、やはりそこには明かりがついていた。
「トキ…っ?!」
疲れた様子など見せないように、軽く息を整えて。
乱れた服装と髪を直してドアに手をかける。
「全く…あなたはいつもそうですね」
しかしそのドアを開くことは出来なかった。
「す、すみません…!練習のお邪魔ですよね…!」
「構いませんよ、丁度休憩しようと思っていましたから」
レッスン室にいたのはトキヤ1人じゃなかったから。
「で、何の用ですか?」
「…っ、こ、これ…!!」
そこには、チョコレートを差し出している七海さんがいたから。