第14章 赤葦とバレンタイン【裏】
すいれんを強く抱きしめた。ごめん、 ごめん。
「 すいれん、ごめん」
『え?』
「嫌な思い、させてたんだね」
『ん、え、 んんっ』
いまのはゴメンのキス。
やさしさに、甘えてたのかもしれない。 すいれんは、いろいろ考えて、俺を傷つけない反応をしていただけかも、 すいれんのことば、そのまま受け取ってた。
『京くん、京くんてば!』
『京くん、勘違いしてるよ、わたし、チョコたべれるのうれしいし、
京くんが、愛されてるなってわかるから、うれしいよ。自慢だよ、だから、そんなかなしい顔 しなくていいんだよ』
「 すいれん…」
『でも、本命っぽいのを見つけると、さすがに チクリと胸は痛むけどね…』
ははは、と すいれんは 声だけで笑った。
「 すいれん、…ごめん」
『だから、謝らなくてもいいって』
「いや、謝りたい、今まで気づかなかったから…」
すいれんのことをもっと気づきたい、
もっと、わかりたい。
そっと頬に触れた。 すいれんは、目を三日月のように きゅっと細めて、笑った。