第22章 赤葦と星空
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あのときこそ、まさしく、「星の降る夜」。
『ロマンチスト京くんだなあ』
「なんか それ 嫌な言い方」
『褒めてる 褒めてる。かっこよかったよ』
「あのあと すいれんが 飛びついてきて、危うくダイヤ落とすとこだった」
『それはごめんってば』
ソファで 横に座ってた すいれんが、首に手を回す。あのとき 渡した ダイヤは、今は彼女の薬指にある。
渡したのが ダイヤの原石だったため、デザインやカットについて、 すいれんは かなり あたまを悩ませていた。
せっかく京くんにもらったものだから、 そう言って、デザインはシンプルなものに。
その原石は 3つにカットされて、婚約指輪、そして ゆくゆくは 双方の結婚指輪にも入れられるという。 すいれんの好きなものをつけてほしかったから、原石というのは、うってつけだった。
『あ、ごはん炊けた』
「お昼にしようか」
こんな 何気ない日常があるのも、 すいれんが隣ですやすやしてるのも、あの日があったから。
『ねぇねぇ 京くん』
「ん?」
『お米の量は?』
「いつもといっしょ」
俺は、こんな 当たり前をくれた、こんな「いつも」をくれた、
すいれんと、あの星空に、感謝をしなくては、と思う。