第1章 赤葦と年越し【微裏】
「京くん、」
こっちも、と わたしは 京くんに伝えられたのかな。
でも、京くんは また 唇と瞳で 笑って、わたしがのぞんだ唇にキスをくれた。
何度も角度を変えて、触れるだけのキスを幾度も重ねる。ちゅ、ちゅ、と小刻みに、かわいらしい音を立てながら。
京くんの顔が見たくて、ときどき瞳をあけると、ふわりとほほえむ 京くんと瞳が合うのはなんでだろう。(はずかし……)
「 すいれん……」
ああ、京くんの艶っぽい声。この声は、次にすすみたい声。唇を重ねると、京くんがぺろぺろと舐めてくる。
「んんん、けい、く……っ」
名前を呼んだ隙に、京くんの舌がはいってきた。テレビのひかりは 視界の隅にうつるのに、わたしの耳には、いやらしい水音しか入ってこない。
京くんに溶かされてきた。
わたしの後頭部にあてられてたはずの京くんの右手は いつのまにか 首筋を撫でる仕事をしてる。
「あぁ、んんんっ」
「かわいい、 すいれん、もっと聞かせて」
「あっ、……やっ…ぁん…」
「いいよ、その声、唆る」
「け、く、が…… っ」
「おれが?」
「けいくんが、 そうさせるの……」
「うん」
「ん、ん…… やぁっ」
けいくんのゆびは しゅるしゅると動いて、胸の飾りについた。今日は すぐに弱いところを攻めてくる。
とんとん、飾りをたたいたり、さっきのみかんのように、つまんだり、
さっき食べられてたみかんみたいに、けいくんの唇にも挟まれたり。
「 すいれん、きもちい?」
「ああぁ、けいくん、きも、ちい……よ」
ぼんやりしたなか、時計に目をやると、時計の針は閉じていなかった。でも、あと、すこしで閉じちゃう。
そうだ、わたし、京くんにまだ、おせわになりましたって、言ってない、から、言わ、なくちゃ。
けいくんに翻弄されてる身体に鞭を打って、けいくんをぎゅってした。京くんは 攻める手を 休めてくれた。
なにかわたしが言おうとしてること、京くんはすぐにわかってくれる。そういうところが、すき。
「けいくん、」
「ん?」
はあはあとまだ息が乱れる。
けいくん、おせわになりました。京くん、一緒にいてくれて、ありがとうね。わたし、京くんに会えてしあわせだよ。
それだけ伝えたら、京くんは わたしの頭をそっと撫でて、そのきれいなゆびで とろとろにされた。