第6章 赤葦の1週間分
けいくんの様子がいつもとちがう。
いつもなら、人目を気にして わたしが抱きついた瞬間に引き剥がされるのに。
いつもなら、嫌そうにわたしを相手しながらも嬉しそうにするのに。
相槌はうってくれるけど 右から左に話が抜けてそうだなあ。
これは よっぽどおつかれモードみたい。
「けいくん、うち来る?」
「うん……うん、…え!?」
あ、話抜けてなかった。
「ごめん すいれんいまなんて」
「うち おいで、マッサージくらいはしてあげるよー」
「おね、がいします……!!」
「ふふふ〜〜 じゃあ 行くぞ〜〜!」
そうやって、手をつないで家まで帰った。
京くんの手は、ごつごつしてて、わたしより大きくて、とっても安心した。好きだなあ。
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「ん…… ソコ、……はぁっ、」
「ここ?」
「うん、……ああ……。きもちいー……」
さすが陸部のマネージャー。
すいれんのベッドのうえにうつ伏せになって、枕に顔をうずめている。 すいれんはオレのうえに跨って、肩甲骨と、背骨の溝をゆっくりと押していく。
(気のせいかもしれないが、変な声が出るたびに すいれんが にやりと笑っている気がする)
あたりまえだけど、 すいれんのベッドは、 すいれんの使ってるあのシャンプーと、 すいれんのにおいが混じったにおいがする。
それに包まれているだけで かなり幸福なのだが、さらに彼女が馬乗りになってマッサージをするとは、なんてラッキーなのだろうか。
木兎さんが知ったらギャーギャー言われそう。絶対にいわない。(というか、 すいれんと付き合ってることすら言っていない)
すいれんの重みと、指にかけられる圧を感じて、めをとじた。