第1章 出発点
ボチャン・・・
女が池に入った
その下半身は魚のような鰭が完全にあった
さっきまで足だったところは今は鰭と化している
まるで人魚だった
「何者だ」
「お先にどうぞ」
立ち泳ぎをしながら優雅に尋ねる
「ロー、海賊だ」
「フォレンリース・エリエル」
海賊と聞いて怖がらないのも不自然だ
エリエルは赤と青の反対色の瞳をローに向けた
敵意はなく、穏やかなオッドアイ
「お前は、人魚なのか?」
「さぁ、」
曖昧に答えられてしまう
仲間たちは木の影から見ている
「海賊さん、欲しいものは何ですか?」
「ッ…欲しいもの?」
美しい銀色の尾鰭を揺らしている
その口元は優しく笑っている
「お前が…この島のバケモンか?」
「キャプテン失礼っスよ!」
「あァ?テメェが言ったはずだ」
「バケモノ?ふふっ、それはどうかしら?」
―あなたたちから見れば、私はバケモノかもしれないわ―