第1章 出発点
水晶が弾けた
パリィンという音と共に破片が飛び散る
水晶の破片は、ローの頬を掠った
「でも、ここに来た人間は死んでもらうのが掟なんです」
「掟だと?」
水に手を差し入れたエリエル
その包んでいた雰囲気が一変した
静かに水に消えるエリエル
その手で水を剣の形に象っていく
そして宝石に変える
ダイヤモンド・・・
最も硬い宝石
それを振りかざすわけでもない
持っているのは水でできた透明な腕
一気にローへ突き出される
「ッ!!」
「能力者なら私は勝てますよ」
「一体何なんだ…」
「水の奏者、宝石に変えるのは一族の血筋です」
かつて栄えていたジュエリーの島
海賊が己の欲に任せて襲撃し、滅びた一族
水の中では人魚となり、陸上では人間そのもの
そして稀に生まれるオッドアイの女
水の奏者の力を持ち、生きる
―水と能力者では、水が強いでしょう?―