第3章 EPISODE Ⅰ
「お…母さ……ん」
目の前に広がる赤い炎。
消せない記憶と恐怖。
原因となった罪悪感。
全てを背負う器がない。
「ッハ!!」
目を覚ますとそこには天井があった。
だから錯覚してしまう。
あれは全て夢だったのだと。
だが夢ではない。
目の前に見知らぬ青年がいたからだ。
「ハァハァハァッ…ハ…ァ……」
「大丈夫か?」
そう・・・か・・・・・
私、海賊に捕まって・・・
妖狐の一族だって・・・生き残りだってバレて捕まったんだ。
もう、政府にも伝わってるはず。
「お前、どうして手枷つけられてたんだ?」
「…あ゛、い…ィ……」
「だ、大丈夫なのかッ!?」
火の気配がする。
私の嫌いな火。
「火…が……怖い」
「え?あ、俺能力者になったからな。」
見るからにこの青年も海賊だ。
リオノーラはその青年を忌まわしいものを見るような目で睨んだ。
青年はワケが分からないというように困惑している。
「どうしたんだよリオン。」
「な…」
何故この男は私を知っている?
呼び名だって知っているのは…リオンと呼んでいたのは母だけなのに。
「私を…どうして知っている?」
「はァ?お前何言ってんだよ。」
「何で……」
私を知っているのに、私は知らない。
記憶の中のどこを探しても、いない。
目の前の青年が誰なのかすら分からない。
「誰?」
「エースだよッ!!忘れたのか!?」
「分からない…覚えてない。」
記憶は飛んでいない。
何かを忘れた気もしない。
私は何を忘れたの?
あなたは誰?
「あ…分かんな…い」
「嘘だろ…お前は俺のッ」
”俺の”で止まった。
何?
「あなたの…何?」
「妹…なのかも分からねェ。俺はお前が好きだったから。」
「え…?」
妹?
兄弟?
ううん。
私に兄弟はいなかった。
私には家族は死んだ母しかいないはず。
じゃああなたは何者?