第3章 EPISODE Ⅰ
「な、何で…」
「俺たちのこと”だけ”忘れたのか?」
「離してよォ!!」
「!?」
「私は籠の中の鳥じゃない!!!」
急に狂ったように叫びだすリオノーラ。
そして大きな狐に姿を変えた。
九本の白い尻尾を小刻みに振った。
「落ち着け!」
「うるさいッ!!私は自由を約束されたッ!!!」
リオノーラの瞳は真っ赤に染まる。
だが、急に元の姿になって倒れた。
「おいっ!」
「あぁっ!!」
私のせいでみんな死んだ。
一族は滅びた。
私が生まれたせいで。
私がいたせいで。
何であの時、母は私を助けたの?
殺してしまえばよかったのに。
崩れ行く意識の中でただ一点を見つめた。
そこに浮かぶ金色の狐。
母の妖狐の姿金狐だ。
その目は悲しみに溢れ、フッと消えた。
「逝かないでッ!!!」
「しっかりしろぉ!!」
「お母さんッ!待ってよ!!」
今でも鮮明に映る”あの日”の記憶。
一族が海賊に滅ぼされて行く。
捕らえられたものは自害し、奴隷になった者はいなかった。
辺りを焼き尽くす炎。
転がる死体。
舞う灰。
全てを恐怖したあの日。
絶望に陥ったあの時間。
全てを失くしたあの記憶。
その後手に入れたものは何一つなかった。
同時に失うものもなかった。
「死にたい死にたいっ!…もう、嫌だ……」
「…ッおい!」
エースの声も耳に入らない。
リオノーラは今、過去にいた。
過去の記憶の中に・・・