Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第4章 青少年会館ー宿舎ー
「…今すぐは止せ。俺が上がってからにしろ」
「…俺も上がる。もう上がる。すぐ上がる。一番に上がる」
急にザバザバと湯船から出た笹谷と茂庭を、鎌先が不思議そうに見る。自分の発言の微妙さには一切気付いていないらしい。
「?何だァ?のぼせたのか?情けねえなあ。じゃ、俺も上が……」
「…グミ様ァ…」
「グミ様いいから!もお、お前も上がれ、黄金川!」
涙目で呻く黄金川の頭に鎌先が手を載せた瞬間、
「ぃいやああぁぁーッ!!!!」
廊下の方から甲高い悲鳴が上がった。
「……⁉」
ビョッと跳ね上がった鎌先が、黄金川の髪を力任せに鷲掴みしてキョロキョロした。
「な、なな何だよ!誰だよ!!!バカヤロウ、ビックリすっだろ⁉」
「イダイイダイイダイ!!!!か、鎌先さんッ、髪ッ、髪引っ張ってますって!イダイ!離して!」
今日一番の威勢のいい声を上げて黄金川が鎌先の手をブレイクする。
「な、何だ?どうした!?」
茂庭と笹谷が浴室からタオル一枚でまろび出た。
「いやあぁあ!止めてぇ!ウソでしょおぉぉ!?」
またも響き渡る野太く甲高い声。
「何何何!?ちょ、待て!待って!いやいやいや、マジ止めて!何なの一体ぃ!?何か出た!?出ちゃったのおォ!?」
鎌先も堪らず黄金川の頭片手に浴室を出る。
「はだだだだ!イダイイダイイダイッ、鎌先さん止めて!ハゲる!ハゲます!た、助けてグミ様ぁァァァ!!!!」
「おい!一体何なんだ!?」
アラレもない格好で廊下に出ると、大きな人影の前にうずくまる複数人の姿が見えた。
困惑顔の青根が振り返る。片手にカロリーメイトのフルーツ味の空箱。
自販機で買ったものらしい。甘い香りが風呂上がりの石鹸の匂いに混じってリリカルだ。
「さ、さささ、最後の一個じゃん!分け合うもんじゃねえの!?何で一口で食っちゃった!?この二口いィィィ!!!」
床を叩く田中。悲鳴の主はこいつらしい。
「はあァら減ったあァァァ!!!」
「ざーんねーんでーしたあ!早いモン勝ちっしょ、弱肉強食?」
自販機に小銭を突っ込んで牛乳のボタンを押した二口が、口元を親指で拭いながら嬉しそうに笑った。
「大丈夫、朝飯までの辛抱だヨ。うん、大丈夫大丈夫……ん?牛乳もこれラス?ちゃんと補充しなきゃ駄目じゃ…ぶは…ッ!?」