Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第4章 青少年会館ー宿舎ー
今日の宿舎に女子はなし。ついでに言えば見知らぬ男子の姿もない。
実質烏野と伊達工の貸し切りだ。
よって入浴は男女の別なく、二つの浴場を二校で分けて使う事になった。
「···まあせめて烏野の連中と裸の付き合いはしないですんだからな。それだけでも良しとするか」
夕食の席で影山と箸の持ち方で揉めた鎌先がむっつりと言う。
頭にタオルを載せた姿が実にノスタルジーだ。
「本当に良かったよ。お前らデカさやら長さやらで勝負とか始めそうだもんな。ヒヤヒヤしたって」
泡だらけの頭にお湯を掛けて、茂庭が笑った。
「巻き込まれたら最悪だし、いや、マジ安心した」
「お前、そんなに自信がないのか?」
鎌先同様、頭にタオルを載せてノスタルジーな笹谷が全然遊びのない真面目な顔で茂庭を見る。
「へえ?そうなの?茂庭、自信ないの?」
ノスタルジー一号鎌先もじっと笹谷の視線の先に目をこらした。
「···おい、止めろよ、こっち見んなよ。てかどこ見てんだ、お前らは?」
茂庭が慌ててタオルを手に取る。
「どことは言わない。気になるところを見ているんだ」
鹿爪らしく言う笹谷に、鎌先が大きく頷く。
「気になるところって見ちゃうもんだろ?なあ?」
「気にすんなよ!止めろ、バカ!」
茂庭は目を三角にしてアタフタと湯船に飛び込んだ。これ以上大切な部分を好奇の目に晒したくない。
跳ね上がったお湯が、湯船の隅で三角座りして項垂れた人影にざんぶり掛かった。
「あ、悪ィ、黄金川···て、おい、お前大丈夫か?何か今日一回も口きいてんの見てないけど···お前って、話してないと全然存在感ないなぁ···」
茂庭がヒドい事をサクッと言う。笹谷は苦笑いして頭のタオルで顔を拭いた。
「いつも騒いでるから余計にな。何だ、まだ二口と揉めてるのか?」
「……揉めてるどこじゃないスよ…もうないものとして扱われちゃってんス……」
今にも泣き出しそうなメソメソした声で、黄金川がもそもそ言う。
「グミって…グミってそんなにエラいんスかね…?人間様よりグミ様なんスかね…?」
「……何か意味わかんなくて怖い。もうしゃべんな、お前。何だよ、グミ様って」
鎌先がじりっと黄金川から距離をとりながら顔をしかめた。
「何って…すっぱいグミ様ッスよ…」