Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第1章 東北自動車道 下り
「・・・・うち学年のセッターはバカですよ?」
「ん?」
「ん?じゃなく。何でうちの学年のセッターはバカなんですか。菅原さんと同じセッターなのに、アイツは絶対素でキョーチョーセーとか言うようなヤツですよ」
「イヤ・・・影山はバカじゃないだろ?あー、ホラ、何ていうか、プレイに頭行きすぎてて、実生活用の脳みその配分が不自由っていうか・・・」
「バカって事ですよね、それ」
「ん?」
「まぁなあ。いつもいつもバカとは言わんが、今日に限っちゃ大馬鹿だな」
窮屈な通路を座席に戻りかけていた澤村がしょっぱい顔で口を挟む。
「集合場所でガリガリくん食い過ぎて出発直前に腹下すって、何なの一体。うちのリベロと一年セッターは。いや。やっぱりバカだ。いつもいつもバカだ。武田先生がうっすら泣いてたぞ。バカ二人の為に車出す羽目になって」
「そもそも朝からアイスなんか食べる神経がわからない。何考えてンの、全く・・・」
「あれはコーチが悪いよ。朝から売れ残りのアイスなんか差し入れするから」
山口が体を震わせて頷いた。
返す刀で完全拒否した月島と違い、朝のまだ冷たい空気の中でお付き合いアイスを食べた山口は、身をもって朝アイスの攻撃性の高さを知っている。
「凄いのは田中だよな。あの二人と一緒になってバカ食いしてたのに一人でピンピンしてんだから」
菅原が呆れたような感心したような目で、ケロッとお茶を呑んでいる田中を眺めた。
「あそこの定食屋、気を付けた方がいいですよ。田中さんの腹が強いのは耐性があるからかも知れない」
真顔の月島に真顔の澤村が答える。
「いや、アイツは生まれつき腹がガサついんだ、きっと」
「・・・・そんな人と同じコートに立たなきゃいけないなんてやりきれない・・・」
また溜め息をついた月島に菅原と澤村と山口が八の字眉毛で苦笑する。