Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第4章 青少年会館ー宿舎ー
確かに宿舎の靴棚にはデカい靴がぎっしりあった。むさ苦しさ全開の雰囲気が蔓延していた。
自分たちの靴が加わった事でその雰囲気はますます加速して、むさ苦しさは百年経っても消えないんじゃないかというくらい取り返しがつかない勢いになっていたが、見たくないものは見ないですませたいのが人情というもの。
入所式を終えて食堂で夕飯を前に、田中は頭を抱えた。
「何この展開?宿舎にWマウスが、伊達工がいるってどういう事⁉神様の暇つぶし⁉」
「神様だっていくら暇でもアンタひとり困らせる為に頑張っちゃったりしないんじゃない?俺ならヤだもん。怒ると缶コーヒー投げてくるボウズの猿に構うのなんか」
向かいで味噌汁を啜った二口が、汁椀を膳に戻して爽やかに笑いながら頷いた。
「神様もきっとそうだと思うよ?むしろ何かに呪われちゃったりしてんじゃない?うん、じゃなきゃ生まれつき何か憑いちゃってるとか」
「···ならおんなじ目にあってるアンタもそうだって事だよね?わかってる?」
田中の隣でボソボソと鱈のホイル焼きを突付いていた月島が冷たく言う。向かいの小原が小刻みに頷いた。
「何だ何だ、折角同じ宿に泊まる事になったんだからよ、辛気くせェ顔してねえで仲良くやろうぜ、な!」
二杯目のご飯を掻き込みながら西谷が朗らかに笑うのに、その場の全員がいやぁな顔をした。
「玄関でもうヤな予感がしたんだよな。俺の第六感がもうこの宿に入るなって言ってたもん。絶対言ってた。あんなデカい靴履いてる連中にロクなヤツはいないって!」
田中が嘆けば月島が溜め息を吐く。
「だからソレ田中さんも一緒ですよね?デカい靴履いてロクでもないっての。何お向かいさんと同じような事言ってんですか。もうヤだ、このテーブル···」
「第六感が駄目って言ってたんなら、入って来なきゃ良かったじゃん。グランドのトイレで寝たら?デカい靴ないよ、きっと。飯は届けたげるからさ」
二口が小原の膳からポテトサラダをすくい取りながら笑った。
「誰が便所で飯なんか食うかッ、ふざけんなゴラッ」
目を三角にしてテーブルを叩いた田中に、西谷が笑顔で言い放つ。
「まあまあ田中、住めば都って言うだろ?」
「···おいコラ、ノヤ···」
「黙って食べましょうよ。揉めたって宿舎は変わりませんよ」
小原が静かに言った。
「······」