Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第4章 青少年会館ー宿舎ー
「またそういう極端な事を···月島ァ、お前意地悪だねえ」
菅原が通路越しに月島へ苦笑いを向ける。
「意地悪も何も何か変な事言ってます?僕?凄く筋の通った真っ当な事言ってると思いますけど?」
月島が真顔で言うのに野村が真顔で頷いた。
「成る程、彼の言う通りだ。理事に提案してみよう。その際は勿論うちの弟も夜を徹して手伝わせよう。小学生には酷な事かも知れないが、因果応報を知るいい経験になるだろう。虐待等の苦情が来た際には発案の責を負って君と俺とで事情説明する必要があるだろうな。罪と罰の深淵な関わりについて理解して貰えるまで共に戦おうじゃないか。···うん。君とは気が合いそうだな。今夜は君の部屋に泊めて貰おうか。是非朝まで語り合いたい」
「···何言ってんですか、アンタは。勝手に他校のバスに乗り込んで挙句宿舎に入り込むって、頭大丈夫ですか」
「このバスは理事である俺の祖母がチャーターしたもので、今向かっている宿舎の館長は俺の叔父だ。祖母から叔父への心付けの菓子を頼まれたので同乗させて貰った。頭の心配までかけて申し訳ないな」
野村が膝に載せた荷物を軽く掲げたのを見て、月島は無表情に武田と烏養に目を向ける。
「···先生。どうせ壊してつくり直すイカれた基礎なら多少穴を空けたところで工事の手伝いをしたと思えばどうでもいい事です。理事の孫もさっき大した事ないって言ってました。この話はもう止めましょう」
「ぶッ、ははは、いいじゃん、月島。野村さんに朝まで語って貰えって!お前ン部屋、確か五人部屋に日向と影山と山口とお前の四人だしな。丁度いいべ。なぁ、大地?」
菅原が脇腹を押さえて笑いながら澤村を振り返った。
「野村さんが構わないならいいんじゃないのか?どうです、先生」
澤村に聞かれて武田がにっこりする。
「お身内の宿舎ですからね。先方に問題なければこっちは特に?」
「良かったな、月島!」
「···菅さん、アンタ何の恨みがあって···」
「いや、冗談を真に受けないで下さい。ちゃんと帰りますよ。帰って弟によく言い聞かせなければ」
止まったバスから一足先に降りて、野村は車内にきちんと一礼した。
「乗せて頂いてありがとうございました。先に叔父に挨拶したいので失礼します」