Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第3章 盛岡梅誠高等学校
「ああ~、いるなァ・・・。なんか目ェベッカベカに光らせてこっち見てんぞ?」
「な!?何とかなんない?可哀想なんだよ、ここうるさいから」
「なったってボウズ、この狭いとこ厳しいぞ、流石に。鉄格子がっちりだしなぁ」
「ええ!?にいちゃんくらいちっちゃくても駄目なのか?」
「ちっちゃくて悪かったな!」
「ちー。じゃ、そっちのちっちゃいにいちゃんは?」
「うーん・・・」
「そっちのでっかいにいちゃん・・・・は絶対無理だよなあ。あー、もう!俺が捻挫さえしてなきゃ!こんな頼りないにいちゃんたちに頼んなくてすんだのに!」
「・・・・ごめ・・・」
「謝っとこじゃねえだろ、青根!コラボウズ!人にもの頼んどいてその態度は何だ!」
「・・・だって頼んでも頼まれないじゃん、にいちゃんたち」
「捻挫してなくても無理だって。中に入ればまだ何とかなるかもだけど、入口の格子、外れなさそうだしさ、ノヤっさん、蜘蛛の巣ついてっスよ」
「お」
「ちー!じゃどうすんの!?もう赤ちゃん出てくるって言ってたよ、バアチャンが!」
「お前のバアチャン動物のお医者さん?」
「ちっげーよ!でも動物好きだからわかんの、色々知ってんの!スゲーんだぞ、バアチャンは。猿とインコ飼ってンだから!」
「何だそりゃ。半分スゲーけど半分フツー」
「失礼だな、ちっちゃいにいちゃん!インコなんか歌うインコなんだぞ?」
「ええ!?何ソレ何ソレ!!!スゲー聴きたい!何つって歌うの!?何歌うの!?」
「あさび~らき~♪とか」
「あさ開ィ?CMソング?・・・・ローカルだな」
「いわて~が~わ~♪とか」
「い、岩手川・・・お前のバアチャン、インコに何仕込んでんの?」
体育館の裏、鬱蒼と背の高い雑草の生い茂るなか、西谷、日向、青根は、小学生と一緒に屈み込んで一心に床下を覗き込んでいた。
中にはお腹の大きな猫がいる。今日明日にも産まれそうな状態らしい。
四人で額を付き合わせて小さな鉄格子から中を透かし見ているが、猫は奥に居座って目を光らせるばかりでピクリとも動かない。
体育館では練習が始まったようで、ボールやシューズが床をつく音がドンドン響いて来る。猫が神経質に尾を振るのが見えた。