Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第3章 盛岡梅誠高等学校
「んはー、やっぱ女ン子多いね~!いいんじゃない?いいんじゃない?」
「みっともないから止めろ、無口」
「無口じゃねえし!」
「知ってるよ。だから無口になれって言われんだろ?少し黙れって、お前は」
額に手をかざして梅誠部員を見渡す二口に、呆れ顔で突っ込む小原。
「あーあー、またうっせェのが来たよ。おいデコッパチ。絡むんならアイツにしとけ。あのバカタレ、ここまでカラオケしながら来たんだぞ?あるか、そんなん。ブロックかまして前髪九一にしてやれよ」
田中が耳打ちするのに梅誠の石川は目を瞬かせる。
「カラオケ嫌いか?」
「いや、好きだけれども!」
「ならいいじゃん。暇があったら案内するぞ?なあ、野村ァ?」
「練習と試合を疎かにしないのであれば楽しんで貰った方がいい。羽目を外さないよう慎めよ、宮沢、石川から目を離すな」
「はい」
穏やかな顔で頷いた宮沢が、歩き出そうとして不意にひっくり返った。
「・・・あ・・・悪ィ」
テンテンとボールがバウンドしながら転がって、いつの間にか用具室の前にいた影山が頭を掻いた。
「あっちのデコッパチ狙ったんだけど。アンタがいきなり出て来っから」
「・・・今のは君?」
ボールの直撃で赤くなった顔を押さえながら宮沢がにこやかに尋ねる。
「今のは俺」
影山が無愛想に答える。
「そう?気を付けてね?痛かったよ?」
「だろうな。痛くしようと思ってやったからよ」
「そう?」
「そう」
「・・・・」
何か言いかけた宮沢が、今度はガクンと前のめりになる。
またボールがバウンドしながらテンテンと転がって、能天気な声がした。二口だ。
「ごめーん、そっちのバカにボール返してやろうと思ったら、間にキミがいるんだもん。ぶつかった?ぶつかったね!悪気はないよ!悪いのはそっちの塩辛ヤローだかんね?」
「・・・・」
また何か言いかけた宮沢を遮るように、月島がボールを片手で拾い上げた。
「全然うまくやってける気しないデショ?正解だよ。苦労すると思うね」
宮沢にボールを押し付けて、クッと眼鏡を押し上げる。
「まあ程ほどによろしく。いいよね、三日我慢すりゃいんだから。ボクなんかこれからずっとだよ。先が長くて目眩がするったら」
言いながら立ち去る月島を見送って影山が口を尖らした。