Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第3章 盛岡梅誠高等学校
体育館には既に男子女子のバレー部員が並んで烏野伊達工を待ち構えていた。
「お疲れ様です!来校ありがとうございます!」
足を踏み入れた途端に体育館に響いた声に、烏野のメンバーは面食らって足を止めた。
女子部員の半分くらいの頭数の男子の中から強面の部員が一人、前に出た。
「梅誠高校男子排球部主将、野村です。よろしくお願いします」
何故か東峰に手を差し出す。
東峰の猫背が当惑で伸びた。
「や、いやいやいや、俺、違うっスよ。主将はあっち」
澤村を手で指して頼りなげに言う東峰に、野村が難しい顔をする。
「成る程。しかし君は烏野のエースだよね?僕は知っているよ。正直弱小な我が男子排球部だが、次代に次ぐ足跡を探るのに吝かでないからね。エースならばエースらしく、チームを背負って主将とはまた別に握手をしても良いのではないか?」
改めて澤村に向き合い、深く一礼して握手してから野村は東峰を見返った。
「腰の座らない男だな。惜しいことだ」
「さっきからうっせえですよ、何だ、このとっつぁんはよ、ええゴラでございますぅ。頬っぺたにアターックかましちまいますよ、おいゴラ?」
田中がズズイと前に出る。
と、梅誠からも小柄な部員がズズイと出た。
「うるせえボウズだな?テメエブロックかますぞ?黙りゃがれ、あぁん?」
「あぁんじゃねえよ、何だテメエ。悪食烏野でも最強の腹を持つ俺をブロックするってか。無理無理無理~!!!!」
「悪食かよ、お前ら。俺は美食家だ。気ィ合わねえな」
「び、美食家!?何ソレ、またゴージャスか!?ゴージャス美食編ン!?」
「何言ってんだ?訳わかんねえ、コイツ」
「止めて下さい、石川さん。喧嘩売ってどうすんですか」
デコッパチの部員を押さえて穏やかな顔立ちに頑強そうな体躯の部員が頭を下げる。胸に宮沢の縫いとりがある。
「すいません。みんな楽しみ過ぎてオーバーヒートしちゃってるんですよ。本当に申し訳ないです」
「あ、や、全然」
怯んだように頭を掻いた東峰の背に覚えのない手の感触が載る。
「惨敗を喫するのは各校の自由だが、忠告までにひとつ。烏野も俺たちも甘くないぞ」
言いながら通りすぎて行く笹谷。
「ども。伊達工ス。よろしくお願いしゃす」
並み居る梅誠部員に軽く顎をしゃくって鎌先が挨拶する。