Run.run and fly. ーハイキュー!!ー
第3章 盛岡梅誠高等学校
西谷が日向から荷物を幾つか引き受けようとして揉めている。
「あ、おい、待て!置いてくな!」
慌てた田中に茂庭が声をかける。
「じゃ、また体育館でな」
「うィス。よろしくお願いしまッス」
二口に右の中指を突き出して見せてから素直に一礼すると、田中は伊達工に背を向けて駆け出した。
「・・・澤村も苦労してるんだろうな・・・」
笹谷がそれを見送ってしんみりと呟く。
「"も"ってなんスか、"も"って」
眉をひそめた二口の顔に、鎌先のバックがボッフと押し付けられた。
「"も"だろうが。"も"。お前がこっちの苦労の大元だ、二口」
「・・・・人の事言えんの、鎌先」
「ね、ね、茂庭さん、でーすーよーね!?鎌先さんには言われたくないスよ、心外だなぁ!」
「あぁ!?俺だってお前にそんな言われたかねえよッ!七三スパイカーがッ、何だ、その前髪!」
「ぅお!?何スか!?今更そういう突っ込み入れるんスか!?うわ、何この裏切られた感!チームワークにヒビ行きましたよ、もォ今確実に!」
「うるせえ。知るか。黙れ、しちさ・・・ふが
・・・・ッ」
「後輩相手に聞き苦しい。止めろ、鎌先」
鎌先をはたいた手を二三度振って組みながら、笹谷が溜め息を吐く。二口に視線を移して眉をひそめ、
「お前もお前だ。全く口の減らない・・・そもそもお前に二つも口は要らん。一口になれ」
「・・・・プッ。一口って・・・」
ここまで何食わぬ顔で話を聞いていた小原が小さく噴き出した。茂庭も鼻の下をくぅッと伸ばして、笑いを堪えている。
「いいねえ!冴えた事いうじゃねえかよ、笹谷!今日からお前は一口だ。分かったか、二口」
ダハハッと大喜びで言った鎌先に、二口が
ヘラッと笑った。
「一口二口どっちなんスか。トーイツして下さいよ、トーイツ」
「あん!?トーイツ?・・・どっちかっつうと一口?」
「ははー、つう事は、大体一口でちょっと二口?」
「うるさい。もう止めろ!お前はもう無口だ。無口堅治だ。以上終了終り!行くぞ!」
笹谷が足元のバックを肩に担ぎ上げた。部員を睥睨して喝を入れる。
「弛んでるんじゃないぞ!遠征とは言え手を抜くな!梅誠にも烏野にも遅れをとるな!伊達工のプレーを見せつけてやれ!」
「うィス!!!!」