第7章 戸惑う心
「とにかく今は切り替えなきゃ。
反省するのは今じゃなくても出来る。
けど患者を助けられるのは今しかない…!」
そう自分に言い聞かせ、荒れた心を落ち着けて行く。
現場全体を見回すと呼吸を荒くしお腹を押さえている妊婦が目に入った。
彼女から処置しよう。
「亜城西救命センターの霜月だけど…大丈夫?」
担当する患者には基本名乗ることになっている。
「赤ちゃんを…赤ちゃんを…」
私に対して返事をしたつもりなのか、しきりにその言葉を連呼している。
タグを見ると黄色で腹部強打となっていた。
「ちょっとお腹触るよ」
その場で母子の様子を調べる。
己の手やエコーを用いて診察する。
「胎児心拍下がってる」
タグを黄色から赤へと変える。
「奥さん、胎児心拍という胎児の心拍が落ちてる。
ここまで落ちてるとなると胎児を助けるのは厳しい。
母体を優先にする、良いね?」
それしか助ける方法はない。
診断結果を偽りなく告げる。