第7章 戸惑う心
かといって他の医師は頼りにならない。
むしろ連結を乱しかねない。
神崎の居ないこんな時に…。
珍しく動揺した様子を露わにする神那。
どうしよう…どうしたら…。
その単語だけが頭の中をぐるぐると回転して行く。
早く判断しなきゃ患者が死ぬっていうのに…。
こんな時に、何をしたら良いか分からないなんて…!
いつもと違う自分に憤りを感じる。
「大丈夫だ、落ち着きなさい」
ポンッと肩に乗った手の温もりと声の正体を私は知っていた。
ここに居る筈のない…。
「神崎…」
神崎の声。
ゆっくり振り返るとそこにはスーツ姿の神崎が立って居た。
「どうして?講演会の筈じゃ…」
そんなこと今はどうだって良い。
そう思う私の意志に反して口は動く。
「話はあとでにしよっか。
神那ちゃんは向こうの現場に行きなさい。
ここは僕がなんとかするから」
有無を言わせない神崎の低い声。
自分が動揺し迷ってしまったことに苛立ち、自身の薄い唇を噛んだ。
「…お願い」
弱々しくそう呟くとテントをあとにし、向こうの現場へと向かった。