第6章 初めての…
オペ室を出ると水道の傍にあるゴミ箱に手術着一式を捨てる。
このゴミ箱も余計なものを触らないように脚で踏んでフタを開けるタイプになっている。
そしてようやく手を洗う。
オペ前よりは簡単にだが隅々まで洗う。
洗った手を紙のタオルで拭った。
共用のタオルでは衛生的ではないからである。
手を拭いた紙タオルをゴミ箱に捨てると、ようやくステーションへ向かうことが出来る。
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ステーションへ戻ったらカルテの記入が待っている。
外科医と言ってもオペだけをこなしていれば良い訳ではない。
オペとそれに伴う書類仕事も必須。
記録がおざなりであれば、いざという時に役に立たない。
「お疲れ様、オペ大変だったみたいだね」
「そうでもない」
ステーションに入る手前でポン、と肩に手を置かれた。
その手を払い、神崎を無視してステーションへ入って行く。
「あ、そういえばね。
これ神那ちゃんに渡してって言われたんだった。
なんでも男の人が持って来たらしいよ。
僕はナースちゃんに代わりに渡してって頼まれただけだから」
はい、とそれを手渡す。
看護師は私と直接話をしたがらない。
別に話したいとは思わないけど、こうして人を介するのは効率が悪いと思う。
「手紙?」
「みたいだね。
今時手紙なんて珍しいね」
受け取ったそれを一瞥する。
どこにも差出人の名前はない。