第6章 初めての…
オペ室には独特な空気が漂っている。
バイタルを示すモニターの音。
壁の中央に備わっている経過時間を示す大きなデジタル時計。
その近くの壁にある普通サイズの丸い針時計は時刻を表している。
オペ室にある時計類は全て電波式ではなく電池式だ。
オペ室内の機械に不要な影響を与えない為である。
「終了、あと縫合しておいて」
縫合は残りの医師に任せてオペ室をあとにする。
執刀医と言っても最初から最後までオペに携わる必要はない。
私じゃなくても出来る作業は他の医者に任せた方が効率が良い。
早く終わるとかじゃなく、私の体力の問題。
私がオペ出来る体力は限られている、いざと言う時の為に体力は残しておくに越したことはない。
「「「お疲れ様でした」」」
ドアの前に立つとウィン、と自動でドアが開いた。
これも不用意にものを触らない為。
オペ室は徹底して清潔にしているけど念には念を、ということだ。
言い忘れていたことを言う為、1度ドアの外で立ち止まる。
まぁ、言わなくても分かることではあるが。
あとから聞いてないと言われても面倒くさいから。
「縫合終わったら元の病室へ。
目が覚めたら絶対に何も食べないで、とキツく言っておいて」
何度もこういうことがあっては堪ったものじゃない。
注意してもそれを聞かない患者のせいでオペになったことは幾度となくある。
その為に時間は削られるし体力も減る。
言い終えるとちょうどドアが閉まった。