第6章 初めての…
ストレッチャーに移した患者を処置室へ運び込む。
「Aライン取って、RCC2単位とエコーも。
それからオペ室押さえて麻酔科に連絡」
「はいっ」
【Aライン】
動脈で取る点滴のこと。
【RCC】
濃厚赤血球のこと。
全身から赤血球のみを取り出し、MAPなどの保存液を添加したもの。
【エコー】
超音波検査のこと。
高音波を身体に当て、返って来た反射波(エコー)を記録し動きを見る。
1つだけ空いていたオペ室に患者を運び、麻酔をかけて貰う。
その間に着替えを済ませ、専用の道具を使い手を念入りに洗う。
麻酔が掛からなければオペは始められない。
「麻酔終わりました」
「分かった」
「次があるのでずっとは居られませんが、何かありましたら呼んでください」
「ええ」
麻酔科医と入れ替わるようにオペ室に入り、患者の前に立つ。
「じゃあ始める」
「「「お願いします」」」
軽く息を吐いてからオペを始める。
この軽く息を吐く動作はオペ前に毎回欠かさず行っていること。
私のルーティンのようなものだ。
オペに集中する為の1つの動作である。