第6章 初めての…
「そうそう。
僕はあれこれ悩んでるっていうのに自分はさっさと決めてヘリに向かっちゃうし。
本当に1人で先に行っちゃうんだよ?僕は救命なんて経験したことないし、現場のことなんて分からないのに」
「当然でしょ。迷えば迷うだけ命が削られて行く」
「分かってるって。
脳外科医が現場に出ることなんてゼロなんだから、ちょっとぐらい教えてくれれば良いのにねー。
未経験で現場に放り出されたら戸惑うことだってあるでしょ」
チラッとわざとらしく神那を見やる神崎。
言い返したいことがいくつかあるが、まぁいい。
面倒だし。
神崎も私が何を言いたいかぐらい分かった上で言ってる訳だから。
「お2人はどうして選ばれたんですか?フライトドクターに。
周りにだって沢山の医者は居たんですよね?」
「お。なんだか懐かしい話をしてるなぁ」
数枚の書類を片手にステーションへ入って来る青島。
「ドクターヘリ制度について勉強してるのかい?感心だなぁ」
「はい、まぁ……」
なんとも歯切れの悪い言い方だ。
勉強というよりは単純な興味だろう。