第5章 機械と呼ばれる理由
「それが一体なんの役に立つって言うの?
感じたところでただ気持ちが浮き沈みするだけ」
「それが良いんじゃないですか」
「理解出来ない」
浮かれたり沈んだりする時こそ時間の無駄。
感情に左右されていては、現場で判断に迷ってしまう。
判断に迷えば迷う程、それだけ多くの命が失われている。
「はいはい。
ここで言い争ってたら患者さん起こしちゃうからステーション戻ろ?」
益々ヒートアップしそうだった言い合いの仲裁に入る神崎。
*****
その仲裁も虚しく、言い合いはステーションへ戻る途中の廊下まで続いた。
「神崎先生はどちらなんですか?やっぱり人として感情って必要ですよね!?」
僕を真ん中に右を歩く神那ちゃん、左を歩く水原ちゃん。
本当は横並びで歩くのは良くないんだけど、神那ちゃんが隣を歩いてくれるのが珍しくてそのままで居た。
そして案の定巻き込まれた。
「えー、僕に振っちゃう?
僕としては半分半分かな。どっちかって言われても選べないよ。
外科医にとって心は必要ない、むしろ邪魔なくらい。
でも人にとって心は大切だよ。
だから僕は半分半分」
どちらでもあり、どちらでもない。
だからその問は非常に答えにくい質問だ。
外科医として聞かれているのか、人として聞かれているのか。
それによって答えが変わって来る。