第5章 機械と呼ばれる理由
「まぁ、それは分かってるんだけどね。
人間そう簡単に感情は捨てられないものだよ」
感情がなかったら最早それは人と呼べるのだろうか。
それこそ機械になってしまう。
勿論神那ちゃんにはそんなこと言わないけど。
「感情なんて私には必要ない。それは時に判断を鈍らせるだけ」
感情があれば患者を選んでしまう。
それは判断(トリアージ)ではなく好みになってしまうということだ。
例えを言うならば患者の意思を優先させてしまうこと。
許可を仰ぐことと、全て患者の意思に従うことでは話が違うのだ。
助かる見込みのない子供を助けて欲しいと言う意思に沿い、結果どちらも死なせてしまうこと。
助かる見込みのある犯罪者でなく、助かる見込みのない善良な被害者を選んでしまい、両者共死亡させてしまうこと。
例を挙げたらキリがない。
「俺はそんなことないと思います。感情は必要です」
神那の目を真っ直ぐ見て告げる。
「どうして?
感情があるからこそ人は妬み、傲(オゴ)る」
「感情があるからこそ人は喜びや悲しみを感じることが出来ます!」