第5章 機械と呼ばれる理由
差し出されたそれらを無言で受け取り、手早く注射する神那。
「痛っ……止めておくれっ。酷いことしないでおくれよっ」
そして打っている間は痛みに悶える。
血管から針がズレないように神崎に手をしっかり押さえて貰う。
多少手荒だけど、血管さえズレなければ問題は無い。
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なんとか無事に打ち終わり、しばらくすると……。
「良かった。患者さん、落ち着いて来たみたいだね……。
譫妄の原因って何かな?検討ついてる?」
「恐らく薬。投薬を見直すよう話を通しておく」
疲れた様子で手を離す神崎。
使った道具や暴れた時に散乱した部屋、主にベッド周りを片づけて行く神那。
そういった部分を見ると優しい人なんだなって思える。
倒れた点滴機、床に落ちたページの折れた本、クシャクシャになり床に散らばった折り紙。
それらを慣れた手つきで整えて行く。
「やれやれ……仕方ないとは言え、ああいう無理矢理なのは性に合わないんだけどね」
片づけを手伝うことはせず傍観している神崎。
「ただの処置に過ぎない。別に心を痛める必要はない」
当の患者は眠ってしまった為、布団を掛けつつ言う。