第5章 機械と呼ばれる理由
「彼女、医学界では機械って呼ばれてるの」
「機械……ですか?」
「常に無感情、無表情だからね」
「俺は機械だなんて思いませんけどね」
「すぐに分かるよ。
いや、もう薄々分かってるんじゃないかな?
何事にも冷静で、全く取り乱さないって」
「あ……」
そういえば思い当たる節があるかもしれない。
「ね?あったでしょ?
まぁ、いくら神那ちゃんでも流石に多少取り乱すことぐらいはあるけどね。
皆がそれに気付いてあげてないだけでさ、ほら神那ちゃん表情に出にくいから」
「……意外ですね」
「うん、まぁね。神那ちゃんだって医者である以前に人間だもの」
たまに怖いくらいに取り乱すことさえもある。
普段取り乱さない分、見慣れてなくてビックリすることもあるけど。
そもそも神那ちゃんをあんな風にしちゃったのは僕ら医者だからね。
「神崎先生、無感情ってそんなに大切なことなんですかね?
とてもそうは思えないんですけど」
「まぁ、僕ら外科医にとっちゃ大切だね。
冷静、器用、患者に感情移入しない。
これが外科医に求められることだから」
神那ちゃんはあらゆる感情を無駄なものだと考えているけど。