第5章 機械と呼ばれる理由
「え、そうなんですか?」
「多分だけどね、僕もそう思うよ。大変だねぇ」
「そういう神崎先生はどうなんですか?
書類溜まっているところ見たことないですけど」
「僕?僕はカルテ以外の書類はないよ。やらない。
そういうの苦手だからさ、神那ちゃんに任せてるの」
「へー、そうなんですか。
こういう時書類をやってくれる便利な “ 機械 ” があれば良いと思うんですけどね。
パパッと終わらせてくれて凄く便利じゃないですか!」
冗談っぽく言った筈なのに一瞬でピリッとした空気に変わった。
「確かにそうかもね。
君の言う通り機械の方がよっぽど役に立つ。
無駄な感情なんて持ち合わせてないし、余計な私情も持ち込まない」
書きかけの書類を残したまま、部屋を出て行く神那。
そしてしばらく沈黙が続く。
「何怒ってるんですかね?
俺何か変なこと言いました?」
「言ったよ、物凄くね」
「えぇ⁉︎」
「どんな意味合いであれ、神那ちゃんの前で機械なんて言葉を使っちゃダメでしょ」
「どうしてです?」
「はぁ……水原ちゃん、本当に何も知らないんだね」
「す、すみません……」
意味が分からず首を傾げる水原。
普段はニコニコした神崎の溜め息に、思わず謝ってしまう。