第4章 現実
「本当に頻繁に出動するんですね。
あんまり飛んでるところを見たことがなかったので、そう頻度は高くないかと思ってました」
「日に2回は飛ぶって言ったでしょ、聞いてなかったの?」
「すみません……」
走って行った神崎の後ろ姿を見て呟くフェロー。
機械に腕を挟まれてる、か。
場合によっては切断も考えられる。
問題なのはうちへ運んでも近藤が診れるかどうか。
よそへ回してくれた方が確実かもしれない。
「神那先生って何を信じて医者をやってるんですか?
神那先生の信念ってありますか?」
「……信じているのは私自身。
信念はより多くの命を救うこと、ただそれだけ」
成す術もなくただ人が死ぬのを見ているのはもう2度としたくない。
その為に医者になったんだから。
「その為のドクターヘリ」
「俺も早く乗りたいです」
「その腕を持ってるならすぐにでも乗せられるけど」
「頑張ります!」
Piiii……。
「はい、霜月」
『神那ちゃん?僕、神崎だけど。
腹腔(フククウ)内出血の応急処置教えてくれる?』
【腹腔内出血】
腹腔内における臓器損傷のこと。
もしくは血管離脱により腹腔内に血液が貯留した状態。
語尾の伸びていない、真剣な神崎の声。
医者としての神崎の声だ。