第4章 現実
「あらま、大変だったの?例の患者さん。
随分眉間にシワが寄ってるけど」
ステーションに戻ってすぐ神崎に言われた。
席へ腰を下ろすと共に深い溜め息を吐き出す。
私はあんな酔っ払いの相手をする為に医者になったんじゃない。
「出来るなら担当替えて欲しい。診てるこっちが倒れそう」
「あはは、そんなに大変なんだ、西山さん。
飲酒して高いところから落ちたんだっけ?」
「笑いごとじゃない。
良い歳にして、自分がどのぐらい飲んだら泥酔するのか分からないなんて信じられない」
「あっ、神那先生!
さっきの方の誤解が解けましたよ!
やっぱりちゃんと話せば分かってくれる人でした、凄く優しい方で」
ステーションへ入ってすぐに告げるフェロー。
「誤解って何かあったの?あ、ひょっとしてまた訴訟系?」
「解けようが解けまいが私には関係ない。興味もない。
何度も同じことを言わせないで」
「また神那ちゃんはそんな言い方して……」
神崎の言葉は無視して話す。
神崎もいつものことだと特段気にしている様子はない。
RRR……。
「はい、亜城西救命救急センター」
『葛西(カサイ)消防よりドクターヘリ要請です。
志方(シカタ)工場内で事故発生、負傷者1名。
機械に左上腕を挟まれています。
血圧80の60です。
SpO2は89、呼吸数26です』
「分かりました、ヘリ出動します」
連絡を受けた神崎がCSに確認を取った上で返事をした。
「じゃあ行って来るね」
珍しく走って行く神崎。