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【医療】Leben 〜レーベン〜 <修正中>

第1章 神の手と称される者


「バカじゃないですよ!
本当に皆そう言ってるんですから」



足を止め、声を張るフェロー。
……もういい加減にして。そろそろ限界だ。



「あのね、神の手なんてこの世に存在しない。
仮にあるとしたらそれは医者の努力、経験、腕、才能の結晶。
そんな陳腐な言葉でまとめないで」



今までの努力を、そんなちっぽけな言葉でまとめないで欲しい。
血が滲むような努力をしてもその一言で片付けられたら、たまったものじゃない。
腕の良い医者はそれだけの努力を積み重ねているのだ。



「でも神の手って言うのには間違いないじゃないですか。
奇跡の手術だって何度もこなして来た訳でしょう?」



また小走りで着いて来る。
さっきから聞いていれば、神の手だの奇跡だのと……。



「いい加減にして。
ここは漫画やオカルトの世界じゃない、救命の世界なの。
救命には奇跡なんてものは存在しない。
医者なら夢じゃなくて現実を見なよ、そんなんじゃ救える命も救えない」



物語はいつもハッピーエンドな訳じゃない。
当然神の手だって存在しない。
そんなことも分からないのなら、とっととここを辞めてくれた方がよっぽど良い。
無駄な被害者を出す前に。



「俺は信じますけどね、奇跡」



まだそんなことを……。
怒りを通り越して呆れて来た。
この男はいつになったら現実を見るのだろうか、と。



「神の手だって存在します」



……へぇ。



「なら見せてくれる?その神の手を、奇跡を。
そうすれば信じてあげる」



私は自分の目で見て、感じたことしか信じない。
話も、技術も、人間も。
他人なんて信用ならない。



「そ、それは……」
「証明出来ないなら私の前で2度と口にしないで。
神の手も奇跡も存在しないから」



聞くだけで不愉快になる。



「絶対に証明して見せますから!」



強い口調で言い切った。



「そう、楽しみにしてる。無理だと思うけど」



そんなこと出来る筈がない。
存在しないものは証明の仕様がないのだから。
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