第3章 救命の過酷さ
「儲かるって……面白いって……!
それでも医者ですか!?
仮にもここは命を扱う現場ですよ⁉︎
不謹慎じゃないですか⁉︎」
バン、と机に手を付き立ち上がるフェロー。
声が大きい、そんなに叫ばなくても聞こえる。
私がどう思おうが、どういうモチベーションで仕事をしようが、それは私の自由だ。
他人にとやかく口を出される筋合いはない。
「声を荒げないで、煩い。
今は深夜の病院、患者は寝てる。そんなことも分からないの?
ここが命を扱う場所なのはとっくに知ってる。
というより君よりも遥かに分かってる」
馬鹿にするのもいい加減にして欲しい。
頭が痛くなって来る。
「どうして分からないの?
君好みの言葉に言い換えるならばお金さえあれば救える命だってある。
日々新しいことを学び、経験するのは面白い。
別に不謹慎じゃない」
そこらの医者と一緒にしないで欲しい。
不愉快なこと極まりない。
お金さえあれば、お金さえあれば……母は死なずに済んだ。
お金に執着するのは普通。
「稼いだお金の何割かは難病の子供に寄付してる。
これで助かる命は増える。
それでも不謹慎?」
なぜここまでムキになって答えるのか、自分でも分からない。
自分を否定されたからだろうか。
普段はどうとも思わないのに。
「いえ、素敵ですね」
先程とはうって変わった表情のフェロー。
真面目と言えば聞こえは良いが、この様子からするとマニュアル人間なのだろう。
教科書に載っている通りにしか対応出来ない。
柔軟性に欠けては救命医として、フライトドクターとして、致命的だ。
「そう」