第3章 救命の過酷さ
当直の医師や用事のある医師以外は帰ったと思われる時間帯。
ステーションはシンと静まっている。
「あの、神那先生。
くだらない質問なんですけど1つお聞きしても良いですか?」
「くだらないと分かっているなら聞かないで」
机に備わっている最新型のパソコンを叩きながら答える。
答えるだけ、考えるだけ時間の無駄。
まぁ、答える気はさらさらないけど。
恵は見回りに行っている為、ここには2人しか居ない。
「そんなこと言わずにお願いしますよ」
「煩い。10秒でまとめて」
聞くまで煩くされるのは御免だから。
君と違って私には進めなくてはいけない仕事が山のようにある。
そんなことに時間を割いていられる程暇じゃない。
「はいっ、まとめますっ。
神那先生ってどうして医者になったんですか?
それも過酷な救命の外科医なんかに」
外科医なんかに……?
それに今までの質問の中で1番くだらない質問。
その質問はもう聞き飽きた。
どこへ行っても同じような質問ばかり。
それ以外に聞くことはないのか。
「そんなの決まってる。儲かるし面白いから」
「……はい?えっと、つまりどういう……?」
「言葉通りの意味。面倒だから聞き返さないで」
聞き返される程難しいことを言った覚えはない。
外科医の仕事は過酷なだけあって、相応の給与が支給されている。
多忙を極める救命医かつフライトドクターなら尚更。
手当てがつく分、他の外科医よりも多く貰っている。