第2章 外科的尊敬
「うん、そうだよ。
毎年研修に来る子は居るんだけどさ、卒業まで辿り着けた子は片手の指で足りるぐらいしか居ないの。
ここ救命では大概神那ちゃんが指導医なんだけど、厳しい上に語らないで有名なの。
この病院、まぁ救命だけかもしれないんだけど。
極力一緒に居るようにってのがあるから余計にね」
本当にはた迷惑な決まり。
休憩時間以外はほぼ付きっきりで、嫌になる。
「そういえば変わったルールですよね。どうしてなんですか?」
「いついかなる時も観察し吸収する為だよ。
患者への対応、オペの技術、現場での判断。
全てにおいてね」
「迷惑極まりないけど」
視界の端でうろつかれると気が散る。
対した腕もないのに歳下だと思って偉そうにする人が多いし。
正直1人で行動した方が断然早く終わる。
「厳しいけど神那ちゃんは僕より知識量と繊細なオペには優れてる。
その部分では大いに尊敬してるよ」
冷静なのは当たり前だからそんな言葉は口にしない。
冷静さがなければ救命医なんてやっていられない。
「それ、さっき神那先生も同じようなこと言ってました。
処置速度と耳に関しては尊敬してるって」
本当に余計なことばかり……。
「えー、神那ちゃんにそう言って貰えると嬉しいなぁ。
神那ちゃんお世辞なんて絶対に言わないし」
当然だ。
相手のご機嫌を取って何になるのか。
人の命が掛かっているのにヘラヘラご機嫌取りなんて出来る訳がない。