第2章 外科的尊敬
瑠璃を挟んで会話する。
「じゃあ神那先生が初なんですね?
そんな人に指導医について頂けるなんて光栄です!」
そんなキラキラした目で見られても迷惑。
「私1人じゃない、私と神崎。
初かどうかは確認してないから知らないけど」
わざわざ確認しようとは思わなかった。
誰が1番なんて微塵も興味が無かったから。
結果さえ残せば次に繋がる、より多くの人の命を救う手立てが出来る。
その為に努力して来たんだから。
「何かと仲良いんですね、神崎先生と」
「仲良くはない、外科的相性が良いだけ」
「またまたぁ、素直じゃないんですね」
バカバカしい。
否定するのも面倒くさい。
仲良い、仲良くないで仕事はしない。
「でも神那先生は尊敬してるんだよね?神崎先生のこと。
前にちょっと話してたよね?」
「間違ってはないけど間違ってる。
私が尊敬しているのは神崎の腕だけ。
私に足りない、手術速度と優れた耳のみ」
それ以外はただの医者としてしか見ていない。
女好きのだらしない医者としてしか。
「それ、どういうことですか?」
この人何も知らないんだった。
神崎の名前を知ってるぐらいだから、その有名な理由も知ってるものだと思ってた。
そういう事情に疎い私ですら知っていることなのに。
「救命で求められるのは処置のスピードと正確性。
処置のスピードでは私は神崎より劣っている。
耳というのは言葉の通り。
心臓の病気の約7割は聴診器と問診で聞き分けられるとされているの。
神崎にはその能力がある。その能力は私にはまだない」
「やっぱり凄い人なんだ、神崎先生も。
いつもニコニコしてるから、なんか全然凄い人に見えないけど……」