第2章 外科的尊敬
「挿管ってそんなに大事なものだったんですね。
知りませんでした」
「大事と言うよりは基本中の基本。
出来て当然。気道確保方法だから。
医学書をひたすら読むよりも自分の目で見て経験するもの」
医学書を何十回と読み返すよりも、たった1回経験する方が遥かに覚えが早い。
もちろん繰り返しやらないと身につかないけど。
「ねぇ、神那先生。
医学部って6年制なんでしょ?
フライトドクターの研修期間ってどのくらいなの?
医学部でコース選択するの?それとも卒業後に別で研修するの?」
「基本は約2年。
医学部卒業後、もしくは勤めている病院を辞めて受ける。
卒業出来るか出来ないかは別としてね。
専門研修生のことをフェローシップ、フェローと呼ぶの。
この人がそう」
「え、水原先生が?そうなんだ!
でも最短でも8年かぁ……長いなぁ。
神那先生も8年かけてフライトドクターになったの?」
「私は実質、医学部と医局だけ。
1年目にフライトドクターの話が来た。
国としてもあまり導入されていない、テスト段階だけど」
「え、そうなの?研修受けてないの?」
「そう。ドクターヘリは我々が試運転みたいなもの。
それが上手く行って実績が認められたから今は全国で導入され始めている」
言わば実験体のようなものだ。
研修制度も整っていない段階でトライし、そこから改善点を導き出し、今の研修制度に役立てている。