第2章 外科的尊敬
「これは医学書」
見もしない内から決めつけるのは良くない。
人としても医者としても。
瑠璃のベッド周りには医療関係の書籍がが多く並んでいる。
それを見ればなんとなく予想は出来ると思う。
医術のことを尋ねるのに医者程適した人材は居ない。
「ど、どうしてですか……?」
「わたし医者を目指してるから」
「へ、へぇ……そうなんだ」
「今日は挿管についてだから見ておくと良いかもね」
見て理解出来るなら苦労はないけど。
「神那先生、挿れ方とかはなんとなく分かったんだけど。
ここに合併症になる恐れがあるって書いてあるけど具体的にはどんなのが多いの?
それが分かれば対処法も分かる訳でしょ?
なのにそこまで載ってなくて」
「1番多いのは歯牙損傷。
簡単に説明するとこれは挿管した時に歯を傷つけること。
最悪の場合は折れた歯が気管、食道内に迷入すること。
主に前歯に多い」
医学書をそのまま暗記したような説明。
ツラツラと澱みなく読み上げるように話している。
「そうなんだ、挿管って難しいんだね」
「まぁ、慣れるまではかな。
けどこれが基本。挿管が出来なきゃ何も始まらない」
「そっかー」
挿管にも色々な種類があり、それぞれ難度や必要性が違うから様々なものを習得しなくては肝心な時に役に立たない。