第2章 外科的尊敬
程なくしてドアが開く。
現れたのは勿論……。
「どうだった?神那ちゃん。ICUの様子は」
神那先生だ。
「転落の佐々木さん、やっと意識戻った。
バイタル安定してるしあと数日で転科出来る」
「そっかー、戻ったんだ。
長かったね、3日だっけ?」
【転科】
担当する科が変わること。
救命で担当した患者は容態が安定すると、病状に適した科に移ることがほとんど。
転落で3日意識不明だったってことは、さっきの高校生と別の人かな。
結構転落で運ばれて来る人って多いのかもしれない。
「瑠璃、体調はどう?」
具合の悪い時に見上げるのは辛いから、傍にあったパイプイスに腰掛け、目線を合わせて話す。
普段は気遣いなんてしないのに、患者さんに対しては細かいところにまで気を配れる。
本当は凄く優しい人なんだろうなぁ。
「今日は調子が良いよ」
「熱は?測った?」
「うん、朝検温した。熱はなかったよ」
「食事はちゃんと摂れてる?」
「うーん、半分くらいなら」
食欲あんまりないんだよね、と頬を掻く。
「そう。少しだけ点滴止めてみる?
まずは30分程度だけど。たまには縛れずに過ごしたいでしょ」
「いいの!外したい!」
て、点滴を外すって。
「だっ、大丈夫なんですか?そんなことして」
「余計な口挟まないで。主治医は私。
道具持って来るから待ってて」
「はーい!点滴ないの久しぶりだなぁ」
「神崎先生、本当に大丈夫なんですか?
食べれてないのに点滴外しちゃっても」
「いーのいーの。
神那ちゃんにはきっと何か考えがあるんだよ。
あの子ああ見えて凄く周りがよく見えてるから」