第2章 外科的尊敬
「じゃあ病室まで案内するから着いて来てね」
「はいっ」
病室へ向かう途中の廊下で、患者さんやその家族の方に話しかけられ結構時間がかかってしまった。
うん、僕ってば人気者!
そしてようやく水原ちゃんを連れて来たのは救命の一般病棟。
4人部屋になっている部屋。
コンコン。
ドアをノックをして開ける。
基本返事が返って来ることはないけど、念の為。
何かあったらマズイしね。
窓側の奥にあるベッドのところで脚を止める。
4人部屋と言ってもそれぞれのベッドはカーテンで仕切られていて、周りからは見えない。
「瑠璃ちゃ〜ん、入っても良いかな?」
カーテンで仕切られた内側に声をかけた。
中に声を掛けて返事があったらカーテンを開ける。
もし着替え中だったりしたら大変だからね。
女の子は特に。
「どうぞ」
カーテンの向こうから、まだ大人の女性になりきれていない幼さの混じった声が聞こえた。
ベッドを囲むカーテンをゆっくり開けてその中に入る。
「開けるね〜。久しぶりだね、瑠璃ちゃん。
今時間大丈夫かな?勉強中?」
中に居たのは入院服を着た細身の中高生ぐらいの女の子。
分厚い本を読んでいるその左手には点滴が繋がれていた。
そして終始バイタルを示す機械が規則的にピッピッと鳴っている。
「良いよ。勉強はあとでも出来るもん」
瑠璃、と呼ばれた女の子が小さく頷いた。
「ありがと。新しく救命に来た水原先生だよ」
「あ、水原紫音です。よろしくね」
そう言って右手を差し出す。
救命の病棟にこんな幼い子が居るんだ。
何か事故きでも巻き込まれたのかな。
「……先生、今日まだオペしてないの?
それとも内科医?」
その手を握り返しながら口を開いた瑠璃ちゃん。
「え?どうして分かるの?」
「だって先生から消毒液の匂いもしないし、指に糸の跡も残ってないから。
神崎先生も神那先生も皆いつもついてるのに」
糸の跡?
あぁ、縫合の時糸を結ぶことで出来ちゃうあの跡か。
凄いな、そんなところまで見てるのか。
「よく分かったね、俺元々は内科医なんだ」
「瑠璃ちゃんの担当医は神那ちゃんだけど一緒に担当してね?
今日はその顔合わせ。
詳しい事情はまたあとでカルテで確認してね」
「え?はい」