第2章 外科的尊敬
「あーぁ……怒らせちゃったね」
「えっ、俺が怒らせたんですか!?」
神那ちゃんって怒ると怖いんだよ?、と浅めの溜め息を吐く。
キョトンと呆けた顔をする水原ちゃん。
「何言ってるの〜、話の流れ的に水原ちゃんしか居ないでしょ。
まぁ、元からっぽいけどね。
何があったのかは知らないけど」
「神崎先生は神那先生と長いんですか?」
「うーん、そこそこかなぁ」
「神那先生って元からあんな性格なんですか?」
「あんなって?」
「なんと言うか……歯に物着せぬ言い方、と言うか。
話の筋は通ってますし、間違ってはないんですけど……」
「言い方がキツイ?」
「はい……」
「まぁ、それは元からだね。僕が1番最初に会った時もそうだったよ」
僕が初めて会った時にはもう今みたいな性格だった。
物心ついた時からなのか、あの時からなのかは分からないけど。
プライベートなことだからあまり詮索するのも良くないしね。
「……水原ちゃんさ。
もしかして神那ちゃんに運命とか奇跡とかそういう類いの言葉使ったりした?」
腕も知らないのにここまで嫌われるんだからね。
きっと何か理由があるだろう。
「使ったような気がします」
ありゃりゃ、そりゃ嫌われる訳だね。
神那ちゃんの嫌いなワードベスト3(神の手、奇跡、運命)を全部使ってるんだからね。
「水原ちゃんさ、患者さん1人受け持ってみない?」
「え?」
「救命の一般病棟の患者さん、良い経験になると思うよ」
「ぜひ!」
奇跡なんて起きないことすぐに分かるから。
残りのコーヒーを全て飲み干し、紙コップを捨ててから移動する。