第16章 命は皆大切なのだ
一方、神崎達は…。
「どう?
ここ、初めて来たでしょ」
屋上に来ていた。
「…はい」
「水原ちゃん、ちゃんとトリアージ出来たの?」
「え?」
「冷静にあの場を見て患者を選んだのか、って聞いてるんだけどな」
怒気を孕んだような、いつもより低い神崎先生の声。
「いえ…その…俺、は…」
怒鳴られるよりも迫力があって怖い。
「タグで言えば両方共赤だったよね。
女性の方を優先させた理由って何?」
俺の目を真っ直ぐ見つめる鋭い目。
「だって…彼女は俺らと一緒に働いている仲間で…。
男の方は…殺人犯ですから…」
「だから?」
「はい?」
「殺人犯。
たったそれだけの理由で患者を選んだの?」
トゲを含んだような声に変わった。
「そうですけど…」
「…水原ちゃん、ちょっとごめんよ」
「え?」
ガッと胸ぐらを掴まれた。