第15章 感情で動く、愚かな医者
処置室へ到着すると、すでに1名の患者が運び込まれていた。
「頸部を鋭利な刃物で切りつけられています。
更に、倒れた時に頭をコンクリートにぶつけたようです」
「分かった、僕が診るよ」
「霜月先生はこちらをお願いします!
原日和さん26歳、胸部損傷で…うちの患者です」
「輸液準備して。
水原、FASTやって」
「はい」
エコーを背中側から宛てる。
「FASTネガティブです」
【FASTネガティブ】
超音波検査では命に関わる出血はなさそう、ということ。
「分かった」
「すみません!
誰かもう1人お願いします!」
次から次へと運ばれて来る患者。
「水原、行って。
こっちは大丈夫だから」
「はいっ」
「平野里香、31歳女性。
腹部損傷の………うちの看護師です」
看護師か。
下手に感情移入しなければ良いけど。