第14章 代わりはまだ居ない
「神那先生はいつも書類終えるの早いですよね。
神崎先生の分も含めて2人分ぐらいやってる筈なのに…」
「そんなこと他人と比べたことないから知らない」
早いとか遅いとか興味ない。
早いに越したことはないだろうけど、それでミスがあっては元も子もない。
こういう仕事は期限を厳守し、早さよりも正確さが重要だ。
「神那先生らしいですね」
「お。頑張ってるね」
「カルテって大変やもんな」
2人同時に入って来た。
「そうそう。
僕みたく人任せな医者になっちやダメだよ?」
「それ、自分で言うたらアカンのとちゃいます?」
「やっと1枚出来ました、神那先生」
ズイッと渡して来る書類を受け取ろうとするけど…。
「…?」
手が宙を切っただけだった。
「神那先生?」
神那も取り損ねた書類を不思議そうに見つめる。
「神那ちゃん、もしかして具合悪い?」
「そんなことない。
日頃の体調管理は医師の基本」
そう。
そんなことあってはならないのだ。