第12章 実力社会
「俺には…俺には無理だ…。
無理…出来ない…」
口をパクパクさせ、顔色を青白くさせている。
ここで処置するには人手が必要不可欠。
…仕方ない。
こういうのはあまり好きじゃないんだけど。
「今更バタバタしても仕方ないでしょ。
ただ見ているだけじゃ患者は救えない。
だったら腹を据えて解決策を考えなさい!
目の前にある消えかかった命を救えないで、救おうとしないで君はそれでも医者だって胸を張って言えるの?
ここで引いたら…2度とこの場に立てなくなるよ。
目の前の患者から目を背けるな。
命から逃げるな、向き合え」
「…」
俯いたまま、唇を噛むだけだった。
…やっぱり無理か。
「レスキュー。
あっちの患者も出来るだけこっちに近づけて」
こうなったら私が全部を背負うしかない。
この患者の命も、向こうの患者の命も。
全て私が。
「了解です」
私がやらなきゃ助からない。
「こっちは輪状甲状靭帯切開と向こうは挿管をするから準備して」
「はい」
結局は私がやるしかないんだ。
私がやるしか…。