第1章 神の手と称される者
神崎はやっぱり甘いね。
遠回しじゃなくはっきり言えば良い。
君はフライトドクターに向いてない、って。
「普段はそれぞれ専門があるけど救命ではそんなの関係ないからね。
まぁ、多少は関係あるけど緊急の時はほとんど無視だね。
専門外だから出来ないじゃ、急を要する患者さんを助けることは出来ない」
組んでいた脚を反対に組み直し、続ける神崎。
専門なんかにこだわってたら助けられない。
当然専門的知識がないと出来ない処置もあるから、その場合は応援を呼んで処置をして貰う。
「そうなんですか?」
……なんなの?
いちいち反応が大きい。
まさか知らない訳じゃあるまいし。
「うん、僕達は一通りの外科の知識はあるよ。
だから簡単な処置なら施せる。
それ以外は専門の先生に任せるか、指示を貰ってオペするか」
「結構過酷なんですね」
「それが分かってて救命医をしてる」
そんなの全て分かった上でこの道を選んだ。
誰よりも多くの命を救う為に。
「一応、救命の医師について話しとくね。
救命は色々な科の先生集まってるんだよ。
脳神経外科の僕、胸腹部外科の神那ちゃん。
産婦人科の恵ちゃん、形成外科の近藤くん」
「やっぱり外科が多いんですね」
「救命に来るのは外傷患者がほとんどだから。
挿管(ソウカン)、縫合の出来ない医者は要らない」