第12章 実力社会
現場へ着陸するとセットを持ってヘリを降りた。
「処置終わり次第搬送するからスタンバイしておいて」
搬送に備えてヘリを待機させておく。
「了解」
「君達は気道熱傷の方へ行って」
「「はい」」
腕を知らないけど、救命を志願するぐらいなんだから多少は使えるだろう。
それより問題はこっち。
患者の現状から判断するに一刻も早い処置、的確なオペが必要だ。
セットから器材を取り出すと1人で治療へと取り掛かった。
「せ、先生!霜月先生!」
看護師に呼ばれた。
「何?」
処置する手を止めることなく返事をする。
いちいち手を止めてては時間が勿体ない。
「お願いします。
こちらも診てくださいませんかっ」
叫ぶような声に思わず顔を向けた。
「な…」
「バイタル1桁なんです…」
「どうしてそうなるの?
気道熱傷の患者でしょ?
挿管で気道確保すればしばらくは持つ筈じゃなかった?」
ここに来て優先度が逆転した。
急変するにしても限度がある。
ここまで一変するのはおかしいような気がする。