第12章 実力社会
「好きになったり、付き合ったり、結婚する人っていうのは利益だけで選びませんよね?
例えその相手に大きな欠点があったとしても好きになっちゃう、そういうものなんですよ」
「そんなもの…したことないから知らない」
そう。
私は生まれてから恋というものを経験したことがないのだ。
周りなんて皆低脳で、少しいいなと思う人が出来てもすぐ幻滅する。
ずっとそれの繰り返しだった。
「え?…えぇ⁉︎
な、ないんですか⁉︎」
驚いたような表情を浮かべられた。
「悪い?」
…なんとなく少し気まずい。
「いえ、意外だなと思って」
「昔からそういうのに興味なかったから」
抑揚のない声で告げる。
「勉強に夢中だったんですか?」
「そんなところ。
誰かとつるむのも面倒だったから」
同年代は幼稚過ぎて話にならない。
大人でさえも、話の合う人間は身近に誰1人として居なかった。